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「蝉しぐれ」は、凛とした映像ではあった。しか〜し、 [つっこみ映画評]

前回の寅さんから1年半振りに映画を観た。凛とした映像ではあった。しか〜し、原作と映画のどちらがよいかと問われたら、(問われてないが)原作に軍配を挙げる。やはりこの小説を2時間に凝縮するのはちと厳しい。「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに少年期、青年前期、青年後期+エピローグの3部作にしてちょうどか。もう一つ、道場の兄弟子、矢田の妻女、淑江のエピソードをエピソード1として4話完結でどーよ、と言われても、返事に困るやろけど。。。

藤沢周平ものでは、山田洋次監督の「武士の一分」は観てないが、同監督の「たそがれ清兵衛」と黒土三男監督が脚本を担当したTV版「蝉しぐれ」は観た。「たそがれ清兵衛」よりはよい。TV版の「蝉しぐれ」は第一話の冒頭から中年になった文四郎(助左衛門を名乗ってたが)が出てくる構成にいささかのとまどいがあったが、映画の方は原作に忠実に川で顔を洗っている文四郎と洗濯しているおふくちゃんとの中指の思い出エピソードから始まっていて、こちらの方がやっぱりしっくりきた。

映画の子供時代のおふくの役をやってる佐津川愛美ちゃんは、目元ぱっちりの顔立ちなので、ちょっと感クルーわだった。TV版はあえて子役を使わず、内野聖陽と水野真紀が老け役の反対の若作り役で押し通したが、年齢的な不自然さは否めなかった。文四郎15才、おふくちゃん12才くらいの年端もいかない子供の設定やろから、いくらなんでも、無理。とゆーか、これでは下級武士の小せがれと同じ境遇の小娘の淡い恋心は微塵も感じられなかった。ここんとこも、映画版はまだしも実年齢に近いティーンエイジャーを起用したのは正解。近頃のガキはませてるけど、大人になっても精神年齢は幼いままや。昔の日本人は現代の日本人に比べて精神年齢がかなり高いやろから、今時の20才は昔の14・5才とええ勝負やな。

しかし、まあ例の荷車で父親の遺骸を運ぶ坂道のシーンはおっちゃんもぐっときた。原作では確か友だちもいっしょに荷車を押してくれてたと思たんやけど・・・(うろ覚え)。ここは少年少女のふたりだけにした方が映画的演出としては優れていた。江戸屋敷に奉公に出されるおふくちゃんが、暇乞いに来たのに、文くん(ゆーたら中国からきた留学生みたやけど・・・)と会えなくて、とぼとぼと浜辺を歩くシーンは画面が現代的すぎて変。「男女7人夏物語」じゃないんだから、ビーチには行かんやろ。。。江戸時代の武家娘は、たぶん土手にしゃがみ込んで呆然と遠くの山でも見つめてるんじゃなかろーか。ま、それは差しおいて、蝉しぐれは少年の成長物語なんやから、できれば「北の国から」みたいに、このふたりが実年齢で青年になるまで、じっくり腰を据えて撮って欲しかったな。

なぜかといえば、市川染五郎の青年文四郎がいまいちしっくり来んかった。梨園の御曹司だけあって、上品すぎるとゆーかえらい二枚目やん。端正な役者顔では、田舎藩の下級武士の感じが出せん。いくら文四郎が結構颯爽としたええ男であっても、決して都会の若者ではない。しかも、市川染五郎は、映画出演の時点で30過ぎとるやろに、デカプリオといっしょで年齢不詳なところがある。若いんだか歳くってんだか判然とせん。こんなにつるっとした顔立ちの文四郎は、我らが文四郎では断じてない。まだしも内野文四郎の方が泥くさい田舎の若侍の感じがした。

成人したお福さまは、木村佳乃がやってたが、これもTV版の水野真紀の方が、田舎もんぽくてベター。木村佳乃はTVの時代劇で中流の武家娘役をしていたのを観て、イカにもタコにも武家娘らしいきりりとした芯の固さがあって、ぴったんこやんと感心たことがあったから、この映画でも期待してたんやけど、「えらいあか抜けはりましたなぁ」の感が否めない。ちょっと前の三井住友銀行のCMでも、革のホットパンツ姿に感クルーわのおっちゃんでした。江戸の水で顔洗たら、あか抜けするゆーてもやり杉!

その他のキャスティングについては、ふかわはよかった。今田はいまいち。江戸に学問修行に行くほどのカシコに見えんかった。緒方拳の父子の別れのシーンは圧巻。大滝秀治はいつでも大滝秀治。矢田のご新造、淑江さん役の原沙知絵ちゃんは、結構贔屓にしてる女優さんやが、もう少し内に秘めた情炎の陰りが欲しかった。原作では未亡人となった淑江さんのエピソードが出てくるが、この映画ではほんのちょい役でしかなかった。小倉久寛のお父ちゃんと根本りつ子のお母ちゃんから、おふくちゃんが生まれるとは思わレンジャー。

さすがに映画はじっくりロケできるから、自然描写はすこぶるよい。音楽もよい。欅屋敷での立ち回りは、ちょっと噴飯もの。あのラストシーンでは、世を忍ぶ逢瀬のように感じられなかった。藤沢周平は小説を読むに限る。


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