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「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」は、寅さん映画の白眉とゆーても過言やない。 [つっこみ映画評]

「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人なり」とは、よーゆーたもんや。早いもんでこの前つっこみ映画評を書き飛ばしてから、3ヶ月も経ってしもた。この3ヶ月、何をしてたんかとゆーと、(誰も聞きたない)8月はもっぱら鮎釣り三昧やった。9月はタイガースのセリーグ優勝間近ちゅーことで甲子園通いや。ゆーても、優勝決定戦はテレビで観とったんやけど。。。(トホホ)ほんでもって、10月は何をしとったんか?ほとんど記憶にございません。せっかく八方手ェを尽くして第5戦のチケット手に入れてたのに、ボビーマジックにまんまとはめられてタイガースがボロ負けして、あっけなく日本シリーズが終わってしもて、「片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず」ゆー訳で、ひとり旅に出てました。ゆーのんは真っ赤な嘘で、なにげに忙しかっただけや。その間に、DVDの在庫はどんどん増えて、今や未見の映画が100本にもなってしもた。えらいこっちゃ、このペースでは、在庫分を観終わるのにあと2年くらい掛かかり宗谷岬。

しょっちゅう旅に出てるゆーたら、寅さんや。この前、日本シリーズの3戦目やったか、タイガースがボロ負けした後で、お口直しになんかやってへんかいなとチャンネル回してたら(ゆーても最近はガチャガチャ回すチャンネルはなくなってしもたけど)、NHKのBSで「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」をやってた。この映画は1975年の製作やから、ざっと30年前や。寅さんもまだまだ若かった。マドンナ役のリリーこと浅丘ルリ子はんもまだまだお美しかった。

おっちゃん、寅さんだけは20過ぎの頃から、1982年製作の第29作「寅次郎あじさいの恋」あたりまで映画館で欠かさず観とった。その後は、熱心なファンではなくなってしもた。ちょうど映画館にあんまり行かんようになった頃と合致する。そのうち映画はもっぱらレンタルビデオで観るようになってしもた。一方、寅さんは実年齢より遙かに若そーなまま旅から旅のその日暮らしを続けてたが、こちらは、嫁はんと二人のいたいけな幼子を抱えて悪戦苦闘、刻苦勉励、臥薪嘗胆、奮闘努力、疾風怒濤、序破急急、波瀾万丈、青天霹靂、驚天動地、切歯扼腕、青息吐息、じっと我慢の地道な堅気暮らしやった。寅さんのように自由気ままな旅がらすとちがって、しがない給料鳥で、朝出かけて夜遅く帰宅するまで、休日出勤もしょっちゅうで、連日14〜5時間労働を続けてた。 想えば遠くへ北門だ。

あの頃はおっちゃんもまだまだ無理がきいた。最近は老骨に鞭打ってもすぐに腰砕けや。夕方7時頃になると、お尻がむずむずしてきて、頭がぼーっとしてきて、目ェがかすんできて、こらあかん、さっさと帰宅部になってしもた。帰宅途中にキャバクラに引っかかる訳でもなく、すんなりご帰還なんやが、鉄砲玉の嫁はんはどこぞに遊びに出掛けてまだ帰っとらん。玄関に迎えてくれるのは愛猫のマリだけや。さくらやおいちゃん、おばちゃんのいる葛飾柴又にいつふらっと帰ってきても、みんなが暖かく迎えてくれる寅さんとはエライ違いや。何とも腹立たしい放ったらかし状況なんやが、こんな酷い仕打ちされてもおっちゃんはへこたれへんぞっと。

映画の話に戻ると、このリリー4部作の第2作は、寅さん映画の白眉とゆーても過言やない。第11作「寅次郎忘れな草」のラストで寿司屋の女将さんになってしもたリリーに、「やっぱり、リリーも堅気の暮らしがええのんか」とちょっと失望したんやが、この映画では、しっかりデラシネの女旅がらすに舞い戻っとった。

リリーは浅丘ルリ子のまさにはまり役で、イカにもタコにも浅丘ルリ子以外のリリーは考えられへん。分け隔てのない優しさの持ち主にして男勝りの自主独立の気概が同居してる。さっぱりとした気性で、お上品じゃないけど決して下品ではない。「女版六然*」の境地やね。リリーはどさ回りのキャバレー歌手ゆー設定やが、キャバレーというもんが前世紀の遺物化してしもた現在では絶滅危惧種かもしれんが、昔は旅回りの売れない歌手ゆーのんが結構おったみたいや。個人的には知らんけど。。。

自処超然(ちょうぜん)  ちょっと脱力系で、自分のことにはあまりこだわらず
処人藹然(あいぜん)   人に接するときは和やかにのびのびと、誰にでもやさしく
有事斬然(ざんぜん)  何をするにも、うじうじしないできっぱりとやり
無事澄然(とうぜん)  何もなければ、カリブの海のように澄み切っている
得意澹然(たんぜん)   調子のいいときは、かえってあっさりしていて
失意泰然(たいぜん)  へこんだときも、ジタバタせずにゆったり構えている

へこんだときだけは、さすがに女やから結構ぶち切れよる。ひたすら我慢ゆーかやせ我慢ゆーのんは中年男の専売特許かも試練。事なかれ主義ともいえるが。。。リリーの孤独感は、寅さんの孤独感よりずーっと重くて深かったな。女三界に家なしやから、しゃーないゆーたらそれまでなんやが、寅さんが柴又にいつでも帰って来られるのに反して、リリーは帰るべき故郷を持ってない。当然のようにリリーは、家族の温かさ、穏やかな家庭、地道な堅気の暮らしに飢えてる。自分を捨てた母親との葛藤は寅さんにもあったが、リリーの実の母親へのアンビバレントな感情は想像を絶するほどに暗かった。

リリーも寅さんも堅気ではない、キャバレー歌手もテキ屋もやくざな稼業とゆーか遊び人(=自由業)やから、遊び人ならではの特有のニオイみたいなもんが身体に染みついてるんやろ。ゲイやほんまもんのやーさんが同類を嗅ぎ分けるのんと似たたようーなもんか。「寅次郎忘れな草」で最初に出会うたときから、ふたりの間には仲間意識があった。

そんなふたりともう一人、蒸発した堅気のサラリーマン、トッチャンボウヤのパパが加わって、男ふたりと女一人の道行きが始まるんやが、このロードムービー部分はめちゃよかった。誰もがあこがれる非日常の気ままなその日暮らし、その舞台が北海道の大地であれば、ロマンチックな気分満点や。しかし、3人の珍道中の終わりは突然やって来た。例のごとく寅さんがリリーをいたく傷つけるデリカシーのない暴言を吐いて、リリーが腹を立てて去っていった。この時の寅さんは、まさに柴又のおいちゃんやおばちゃんに悪態をつくのと同じパターンで、リリーに心を許しているから、つい悪い冗談が口をついて出てしまったんやろ。。。寅さんのことを『心優しきエゴイスト』と喝破した人がおるが、おっちゃんもそー思う。この大人げない嗜虐性は、子供が親に悪態をつくのによく似てる。

ただ、おっちゃんが初めてこの映画を観たときは、あのシーンの後、リリーの鞄を持って追っかけて行ったパパが、リリーのマネージャーになってこの先いっしょにどさ回りを続けていくんやろなと思てたら、案外あっさりパパは家に戻ってしもた。たぶんリリーと何日間かは行動を共にしてたんやが、寅さんがいなくなるとリリーとの1対1の関係では気詰まりな場面も出てきて、そのうちリリーが稼いだギャラから「もう家に帰ってあげなさい」と帰りの汽車賃を渡されたんやろ。堅気の衆のパパには、旅から旅の放浪暮らしはやっぱりしんどかったやろ。

この映画で、「私みたいな女でよかったら」と、寅さんと結婚してもええよとゆーリリーの言葉を寅さんが冗談にしてしまい、傷心のリリーがとらやを出て行ってから、「寅次郎ハイビスカスの花」でふたりが再会するまでに5年の歳月が必要やった。おっちゃんも首長〜うして再会の時が巡り来るのを待ってたもんや。

おっちゃんが観た寅さん映画の中では、第5作「望郷編」、第6作「純情編」、第8作「寅次郎恋歌」、第10作「寅次郎夢枕」、第11作「寅次郎忘れな草」、第17作「寅次郎夕焼け小焼け」、第25作「寅次郎ハイビスカスの花」、第27作 「浪花の恋の寅次郎」とゆーたとこがよかったな。どっちかゆーと、マドンナが良家のお嬢さんや後家さんでなく、寅さんサイドの水商売とか浮き草稼業の場合の方が贔屓やな。寅さんこと渥美清が亡くなったのは1996年8月4日、享年68、もう9年にもなるんか。。。そーゆーたらリリー4部作の最後とゆーか、シリーズ最終作とゆーか、結局遺作になった「寅次郎紅の花」で阪神大震災の1年後の神戸を訪れてたな。ほんま「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人なり」や。。。合掌



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クリス

いやー、親爺さんどうしてたかと心配?してましたよ。阪神残念でしたねー(って私はヤクルトファンですが)、同じセリーグとして、もちょっともつれた試合をして欲しかったとです。
寅さんシリーズは真面目に観たことがないんですが(TV放映をちょろちょろみとりました)、日本に戻ったらいつか手に取ってみます。
いつもながらの楽しい解説、ありがとうございます☆
by クリス (2005-11-19 01:25) 

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